やさしいブラウザ・クラウド版はこちらからご利用下さい
  • こうべの食育

「神戸っ子SDGsプログラム」

神戸市学校給食会では、未来を担う子どもたちに、SDGs(持続可能な開発目標)の大切さを学ぶ機会を提供するため、「神戸っ子SDGsプログラム」を実施しています。
本プログラムは、「KOBEハーベスト(大収穫)プロジェクト」として、神戸市建設局下水道部・JA兵庫六甲・プラントメーカーの協力の下、小学生を対象に、下水道の汚泥から回収したリン(こうべ再生リン)について学ぶ“出前授業”と、こうべ再生リンを配合した肥料「こうべハーベスト」を使用して育ったスイートコーン(こうべ旬菜)の“収穫体験”をセットにし、地域循環型社会について理解を深めることを目的としています。

本来なら、「こうべ再生リン」について出前授業で学んだ後に、「こうべハーベスト」で育ったスイートコーンの収穫を子どもたちに体験してもらうはずでしたが、昨年に引き続き、令和3年度も新型コロナウイルス感染症対策のため、圃場(ほじょう)での収穫体験は中止し、学校で出前授業のみの実施となりました。

前半は、神戸市建設局下水道部の武村さんと岸本さんから、クイズ形式でリンと 「こうべ再生リン」から作った「こうべハーベスト」についてお話をしていただきました。

子どもたちがわかりやすくリンについて学べるよう、事前に準備いただいた資料を基にクイズをしながら楽しく学んでいきます。

リンは体内のミネラルの中でカルシウムの次に多い栄養素です。体内でエネルギーを作るときに必ず必要で、骨や歯を丈夫にします。
植物も花や実を大きくするためにリンが必要です。

リンは広く動植物食品に含まれていますが、特に魚や牛乳・乳製品、卵、豆類などに多く含まれています。
人はそれを食べることによって、リンを体内に取り入れることができ、そして、とり過ぎた分が尿などで排出されます。

リンは動植物の成長に必要不可欠なものですが、肥料などに多く使われるリン鉱石は日本では採れないため、輸入に頼っています。

「日本のリン鉱石の輸入量はどれぐらいだと思いますか?」
「25%!」
「50%ぐらい?」
「実は100%輸入しています。」
「えー! 100%も!」

世界的にリンが不足してきているため、100%輸入をしている日本は、国内でなんとかしなくてはいけません。
そこで神戸市が目をつけたのが、生活排水の中に入っているリンです。

下水道部の方が、実際に生活排水の中にどれぐらいリンが入っているか実験してくれました。下水処理場から汲んできた排水を、リンに反応する試薬(含有量が多いほど濃いピンク色になる)に入れると、だんだん色が変わっていきます。

下水道部の方が順番に机を回り、一番濃いピンクになった試薬を見せてくれました。
「すごく濃いピンク!」
「リンがいっぱい入ってる!」
子どもたちは興味津々です。

「では、AとBのコップに液体を用意していますので、どちらにどれぐらいのリンが入っているか、実際に調べてみましょう。」
子どもたちは熱心に試薬を使って調べています。

「Aは何色になりましたかー?」
「うすいピンク!」
「では、Aにリンは入ってますか?」
「入ってるー」
「Bはどうですか?」
「とうめい!色が変わらない!」
「リンは入ってないの?」
「Aはジュースで、Bは水道水です。ジュースにはリンが入っていますが、水道水は浄化しているのでリンが入っていません。」

今までは、下水処理場で汚泥と水に分けたあと、リンが含まれていた汚泥は捨てられていました。
リンが含まれているのにそれを捨てるのはもったいないことです。
神戸市とプラントメーカーは共同でシステムを開発し、「こうべ再生リン」としてリンを回収できるようにしました。
そして、この「こうべ再生リン」を使った肥料、「こうべハーベスト」を作りました。
「こうべハーベスト」は、こうべ旬菜や米などを栽培するときに使用されています。

子どもたちには小袋のこうべ再生リンがプレゼントされました。
「やったー!帰ったら、花にあげる。大きくなるかな?」
「学校で育てている野菜にあげてもいいよね!」

後半は、「こうべハーベスト」を使用してスイートコーンを栽培されている安福さん(神戸市西区)から、栽培方法や特徴などについてお話していただきました。

安福さんは圃場での収穫体験ができなかった子どもたちのために、スイートコーンを根っこからそのまま持ってきてくれました。みんな大喜びです。
 「高いー!ぼくより大きいよー!」
 「大きな実がついてる!」
例年なら2mぐらいの高さになるそうですが、今年は梅雨入りが早かったため、50cmほど小さく、葉も少なかったようです。
 「えー!これよりも大きくなるの?」

授業では、スイートコーンが種からどのようにして実るかなどを教えていただきました。
枝の一番上にある穂のようなものが“雄穂(おしべ)”で、実の先にふさのようについているのが“雌穂(めしべ)”です。
スイートコーンは、同じ株の雄穂の花粉ではなく、となりや離れたところから飛んでくる別の株の雄穂の花粉でないと実ができないので、苗を離しすぎないように注意します。しかし、かえって近すぎると、葉がじゃまになり、うまく受粉ができなかったり、下の方に日光があたらなかったりするので、その調整がむずかしいそうです。
「こうべハーベスト」を肥料に使って、おいしいスイートコーンを提供できるように、心を込めて作っていらっしゃいます。

安福さんが圃場の様子を撮影した動画を見せてくれました。
スイートコーンの葉をかき分けながら歩く様子と、高い位置から圃場を見おろし、だんだん人の目線になり、そして根元の方まで、順番にカメラを動かしてくれています。ガサガサと葉のこすれる音や、ザクザクと土の上を歩く音も聞こえて、圃場に行ったような気分になります。
「すごいねー!林みたい!」
「あ!実がある!」
「あっちにも実があるよー!」
「あまがえるがいるー!かわいい!」

最後に安福さんから、収穫体験ができなかった子どもたちに、朝採ったばかりのスイートコーンのプレゼントがありました。
「やったー!うれしいー!」
「本当にもらえるの?! 」
「おいしそうー!」
子どもたちは大喜びです。

1時間という短い時間でしたが、廃棄されていた資源を回収・再生し、地域の作物を育てる肥料として使用するという地域循環型システムが、今後の社会にとって大切なことだということを知ることができ、とても有意義な時間になったと思います。

★子どもたちの感想文はこちら

PAGE TOP