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シリーズ㉓ 農福連携 ~上野丘更生寮の取り組み~

農福連携とは

障害者等が農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取組です。また、担い手不足や高齢化が進む農業分野において、新たな働き手の確保につながる可能性もあります。
(農林水産省ページより https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/noufuku/noufuku_toha.html

神戸市北区淡河町の障害者支援施設「上野丘更生寮」は、以前より農福連携に取り組んでおられ、令和2年度から学校給食の「たまねぎ」を出荷されています。今後、他の野菜も学校給食への提供を検討されており、今回、にんじんの収穫前、収穫時の2日間にわけて、農地を取材しました。

2023年11月8日 現地訪問①
「施設職員の方にお話を伺う」

農福連携の取り組みを始めた理由

施設利用者の多くは、集中力を持続させることに課題がありますが、何か目的があると集中力が高まります。農作業で土にふれることで情緒が安定し、熱心に作業できる人が多いです。指導する方も農作業を通して、優しい言葉をかけることができます。例えばにんじん畑の雑草抜き作業の際、間違ってにんじんを抜いてしまう人もいますが、こちらが「あ~、抜けちゃったね」と怒らず優しく言うことで、作業を認めてもらえてるという気持ちになるようで、安定して作業を進められます。
また、収穫した野菜の一部が学校給食に使用されることは、施設利用者にとっても嬉しいことのようです。
地域還元の面においても、農地を維持することが役に立っていると捉えています。施設の農地は、淡河の休耕地を活用しています。淡河の農家は高齢化が進み、若者は都会へ働きに出るため、休耕地の担い手が少なくなりました。上野丘更生寮が運用することで、1つでも多くの農地が守られるのであれば、続けていきたいと考えています。

農地について

現在、野菜を栽培している農地の広さは2反(約2,000㎡:50mプール2個分ぐらい)です。にんじん、たまねぎ、ブロッコリー、白菜、キャベツ、大根などのさまざまな野菜と、うるち米や酒米(山田錦)などの米を栽培しています。

にんじん

大根

白菜

ブロッコリーとキャベツは同じアブラナ科で葉っぱが似ており、大きくなってからでないと見分けがつきません。
なるほど、大きくなっていても見間違えそうです。

ブロッコリー

キャベツ

収穫した野菜の加工品

椎茸、にんじん、トマト、大根などは、乾燥野菜として販売する場合もあります。たまに、カットしたなすびも乾燥野菜として販売することがあります。戻してみそ汁に入れるとおいしく、人気があります。

立派ななすびができていました

たまねぎ畑
お話を伺った11月時点では、まだ植え付けがされていませんでしたが、にんじんの収穫時の1月には、植え付けされていました。

11月のたまねぎ畑

1月のたまねぎ畑

にんじんの栽培について

にんじんの栽培は本当に難しいです。地上に見えている葉はきれいでも、いざ抜くと虫が食べていたり、成長段階に石が邪魔して割れてしまっていたり。商品になるにんじんは全体の約8割ぐらいで、有野にある「農野花(ののはな)」、フルーツフラワーパークの「FARM CIRCUS」、「淡河 道の駅」などに出荷します。

先が割れてしまったにんじん

11月頃の作業は、雑草抜きです。
にんじん畑の雑草抜きを怠ると、もともと遅いにんじんの生育が、より遅くなります。そのため、雑草抜きはとても重要な作業です。連続3日を1セットとして、5セットぐらい行います。
中には、雑草抜きが苦手な人がいて、間違ってにんじんを抜いてしまったり、作業がしんどいと嫌がったりします。
根菜は一度抜くとダメになってしまうので、にんじんを抜いてしまう人には、畝の谷に生えた雑草を抜いてもらい、嫌がる人には「抜いた雑草を拾って捨てるのも作業だよ、作業=仕事をすることでお金がもらえるんだよ、できることを見つけて実行しよう!」と、できるだけ参加するよう促します。

水まきも重要です。不十分だと芽がでないこともあるので、種まき時期の8月などは、2~3週間は毎日行います。11月など雨の多い時期は、雨が自然の水まきとなり、人が頻繁に行う必要がなく助かります。

雑草抜き作業の様子

にんじん畑の雑草

農作業全般について

繁忙期は、9月、10月頃。8月も種まきなどで、少し忙しいです。11月初めは、少し落ち着いたところですが、白菜や大根などの消毒作業があります。
大変なことは、種をまく時は「よし!いいものを作るぞ!」と意気込みますが、雑草抜きや水まきなど、栽培するのにとにかく手間がかかります。
嬉しいことは、やはり収穫の時!手塩にかけて育てた野菜が収穫できる瞬間は嬉しいです。また、それを買ってくださるお客様から「こんなに大きい野菜ができたの?」と喜んで声をかけてもらえた時は、施設利用者もやりがいを感じるようです。

2024年1月24日 現地訪問②
「にんじんの収穫」

苦労して栽培したにんじんが、ようやく収穫の時を迎えました。

 

みなさん、1本ずつゆっくり動かしながら、慎重に「にんじん」を抜きます

1人で集中して収穫し籠に入れる人や、複数人で一緒に作業する人、いっぱいになった籠をトラックまで運ぶ人など、作業の内容は人によって様々

今回取材したにんじんは、残念ながら学校給食としては出荷されていませんが、今後みなさんの給食にも出てくるかもしれませんね。
その時を楽しみに。

 
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