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  • こうべの食育

「神戸っ子SDGsプログラム」

神戸市学校給食会では、小学生を対象に、地域循環型社会について学ぶ機会を提供する 「神戸っ子SDGsプログラム」を、「出前授業」と「スイートコーン収穫体験」をセットにして実施しています。
「出前授業」では、下水汚泥から貴重なリンを回収(こうべ再生リン)し、肥料にして、農作物に使われるまでを学びます。そして「収穫体験」では、こうべ再生リンを使用した肥料「こうべハーベスト」を使って栽培したスイートコーンの収穫を体験します。
神戸市建設局下水道部・プラントメーカー・JA兵庫六甲の協働で実施しました。
SDGs(Sustainable Development Goals = 持続可能な開発目標)

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<出前授業編>

最初に、神戸市建設局下水道部の方が「リン」について、クイズをしながらわかりやすく説明してくださいました。

リンは植物や人間の体内にある栄養分で、人体ではミネラルの中でもカルシウムの次に多い栄養素です。体内でとても重要な役割を担っています。
☆ 体内でエネルギーを作るときに必ず必要です。
☆ 骨や歯を丈夫にする成分の1つです。
☆ 植物も花や実を大きくするためにリンが必要です。
リンはさまざまな動植物食品に含まれていますが、特に魚や牛乳・乳製品、卵、アーモンドなどに多く含まれています。人間は、これらを食べることによってリンを体内に取り入れることができますが、植物は肥料でリンを取り入れます。

肥料用のリンは「リン鉱石」から作りますが、日本では「リン鉱石」が採れないので、100%輸入しています。
しかし、リン鉱石は採れる量が年々減って世界的に不足しているため、日本国内でなんとかリンを作りださないといけません。そこで神戸市が目をつけたのが、生活排水の中にあるリンです。
リンは、人が体内に取り入れた分のうち、取りすぎた分が排泄物として排出されます。下水処理場に集まってくる生活排水からできた汚泥の中には、リンがたくさん含まれています。そのリンを活用することで、不足するリンを補います。

実際に、汚水や生活排水(台所・風呂・洗濯などで出た排水)の中にリンがどれぐらい入っているか、リンに反応するとピンク色に変色する試薬を使って見せていただきました。 子どもたちは興味津々です。
「ピンク色になってるー」
「リンが入ってるんやー」

次は子どもたちでリンが入っているか確認します。
「液体を入れたAとBのコップがあります。それぞれ試薬を試してみて、どちらにリンが入っているか確認してください。」
子どもたちは真剣に実験をしています。

「では実験してみてどうでしたか?Aは何色でしたか?」
「ピンクになりました!」
「では、Aにリンは入ってますか?」
「入ってます!」
「次、Bはどうですか?」
「とうめい!色が変わらなかった!」
「リンが入ってないです!」
「そうです!Aはジュースで、リンが入っています。 Bは水道水で、浄化されているのでリンが入っていません。」
「目に見えへんけど、入ってるねんなー」

次はプラントメーカーの方が「こうべハーベスト」について説明してくださいました。
今までは、下水処理場で汚泥と水に分けたあと、リンが含まれていた汚泥は捨てられていました。リンが含まれているのに捨てるのはもったいないことです。
神戸市とプラントメーカーは一緒にリンを回収するシステムを開発し、「こうべ再生リン」として回収できるようにしました。そして、この「こうべ再生リン」を使った肥料、「こうべハーベスト」を作りました。「こうべハーベスト」は、こうべ旬菜や学校給食用の野菜や米などを栽培するときに使用されています。
子どもたちには小袋の「こうべハーベスト」がプレゼントされました。
「持って帰ったら、どの植物にあげようかな。」
「大きく育つとええなぁ!」

ライン

<収穫体験編>

収穫体験は、神戸市西区岩岡町の農業生産者・安福さんの圃場で行いました。安福さんの圃場では「こうべハーベスト」を使用してスイートコーンを栽培しています。子どもたちのために、一番おいしく育ったスイートコーンの圃場を用意してくれました。子どもたちの背丈よりも大きく育ったスイートコーンの木は、林のようになっています。
今回は灘の浜小学校と交流のあるコベルコ神戸スティーラーズの山下裕史選手と一緒に収穫を体験しました。

※コベルコ神戸スティーラーズ:神戸市を本拠地として、ジャパンラグビーリーグワンに所属している日本でも屈指のラグビーチームです。山下裕史選手はプロップという重要なポジションについています。

農業生産者:安福さん

コベルコ神戸スティーラーズ:山下裕史選手

待ちに待った収穫体験です。子どもたちはこの日を楽しみにしていました。
最初に、安福さんからスイートコーンの収穫方法や手順、注意することなどをお聞きしました。
「今年は梅雨明けが早く、水不足を心配していましたが、無事に大きく育って、甘いスイートコーンができてます!家に持って帰る用に、2本、収穫してください。これだ!と思うスイートコーンをよーく選んでください!
そして採るときは葉っぱに気をつけてください。葉っぱのふちの細かいギザギザ部分が刃物のようになって手を切る恐れがあります。手で葉をかき分けるときには、よく気をつけてください!」 

さあ、いよいよ収穫です!畝(うね)にそって一列に並んでいきます。

「すごい大きい!迷路できるんちゃうん。」

「実がいっぱいできてるよー!」

安福さんがスイートコーンの採り方を教えてくれました。
「スイートコーンの頭の方を持って、そのまま下に向けてポキッと折ったら、簡単に採れるからね!葉っぱに気をつけてよー!」

子どもたちはどれがいいか真剣に選んでいます。

「どれがええかなぁ。」

「これにしよ!」

「見てー!大きいの採れた!」

「採れたよー!」

「大切に持って帰らなくちゃ!」

「けっこう重いね。」

新型コロナウイルス感染対策のため、山下裕史選手が代表で味見をしました。
「甘くておいしいよー!」と感想を言ってくれました。

安福さんへの質問タイムです。たくさんの質問に対して、安福さんはわかりやすくていねいに答えてくれました。

Q. 何本ぐらい植えるんですか?
A. この畑全体で1万本ぐらい植えます。
畑に直接種をまく場合は、一粒だけでは芽が出ないときがあるので、2、3粒を一緒にまきます。そうすると、不思議なことに種同士で協力し合って発芽しやすくなります。

Q. いつ(季節)収穫していますか?
A. 3月に種をまき、4月に畑に植え、6月中頃ぐらいから7月中旬頃においしく食べてもらえるようになります。

Q. だいたい採る時間でおいしさは変わりますか?(先生から)
A. お日さんを浴びて、夜に向けて糖分を蓄えてるんで、いっぱい糖分をためた早朝に採ると甘いスイートコーンを出荷できます。みんなが起きるまでに収穫してるんですよ。
Q. とうもろこしのおいしい見分け方は?
A. 簡単に見分けるのは、ひげの色です。ひげの色が緑色のあいだはまだまだです。色がだんだん茶色になって、乾いてカラカラになってきた頃がおいしくなってきている時期です。

Q. 採ったあとはどこに行くんですか?
A. 朝収獲したら、JAへ。JAからスーパーや八百屋にいきます。新鮮なうちがおいしいから、おいしく食べてもらうために、朝早くみんな頑張って収穫して、JAに持っていきます。もしかしたら、買い物にいったときに、このとうもろこしの仲間が売っているのを見かけるかもしれない。お店で、「どんなところの野菜が来てるのかな」とか、「神戸市の野菜あるかな」 とか、ぜひ探してみてください。もしかしたら、私が作った野菜をみんなに食べてもらえるかもしれないし、「あ、あの人が作った野菜かな」というのを思い浮かべながら食べてもらえるとうれしいです。

Q. おすすめの食べ方はありますか?
A. 採れたてをそのまま食べてもらうのがいいけどね。帰ったらすぐにちょっとでも生でかじってみてください。あと、皮がついたまま焼いて、焼きとうもろこしに。皮がラップの代りをして蒸し焼きになります。少し生でも甘く、おいしく食べてもらえます。
それから、とうもろこしご飯。ご飯を炊くときに粒を入れて、さらに芯も一緒に入れて炊きます。芯は食べられないけど、芯からお出汁(だし)が出るんで、塩とか入れて食べてもらえたらと思います。

Q. この収穫の後はどうするんですか。次は何をするんですか?(山下裕史選手から)
A. 収穫後、トラクターで、とうもろこしの木をバラバラ、粉々にして、土にすきこみ、たい肥にします。
そうすると、土が肥えてやわらかくなる。このあたりは冬も雪が積もらないし、温暖なので、キャベツやブロッコリーを秋に向けて栽培します。

 

出前授業と収穫体験で、様々な分野の人々が時間をかけて工夫と努力をしており、持続可能な地域循環型社会を作ろうと頑張っていることを知ることができたと思います。少しずつ、一歩ずつでも、自分たちでできることを考えてやっていくことの大切さを学べたのではないでしょうか。
また、神戸で採れたものを神戸で食べることを実際に体験し、地産地消への理解を深めることができたと思います。給食で毎日約10万食、10万人の子どもたちに提供している神戸産の米も「こうべハーベスト」を使って栽培しています。給食を食べるときは、神戸の農家がこの肥料を使って育てたんだなということを思いながら食べてくれるとうれしいです。

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