2025.02.28こうべの食育 「神戸っ子食育応援団」米国領事館・ニガキ株式会社と協働! 「給食から見える日本とアメリカの学校文化に関する国際交流会」の試行 ~給食会の食育支援プログラム「神戸っ子食育応援団」~ 米国総領事館やニガキ株式会社との協働! 「給食から見える日本とアメリカの学校文化に関する国際交流会」の試行 (一財)神戸市学校給食会は、学校での食育を支援するため、学校給食の食材納入事業者等との協働で、食育プログラム「神戸っ子食育応援団」を実施しています。 この度、納入事業者の一つであるニガキ株式会社と、在大阪・神戸米国総領事館等の協力を得て、「給食から見える日本とアメリカの学校文化に関する国際交流会」と題した取組を実施しました。 今回、この取組に初挑戦したのは押部谷小学校の6年生。当日の取組の様子から紹介します。 実施日:令和7年1月31日(金曜日) 参加校:押部谷小学校 6年生 15人 協力:在大阪・神戸米国総領事館・米国ワシントン州農務部・ニガキ株式会社 今回の取組のねらいは、主に次の2点です。 1.日本の学校給食を、6年生児童とアメリカ領事館員等がともに喫食し、その後の休み時間や清掃活動を通じて見えてくる学校文化の相違点を軸に、日本とアメリカの国際交流を行う。 2.5時間目の授業で、アメリカの学校生活やスクールランチの話題を中心に、アメリカの食文化や農業などについても話題を提供して貰い、これまで学んできた日本の状況と比較しながら、学びを深める。 今回ご協力いただいたアメリカ総領事館をはじめとする皆さんは、日本人や日系の方ばかりでした。それでも出てくる言語が流ちょうな英語の場面では、6年生が少し緊張しながら小学校英語で学習した単語やフレーズを基に、コミュニケーションを図ろうと頑張っていました。 今回お邪魔したメンバーが6年生の教室で紹介や挨拶を済ませたら、給食交流会に向けて当番児童が準備を始めました 教室では担任や給食当番が主食やおかずなどを配膳します、因みに当日の献立はご飯にタッカンジョン・トックでした 給食当番が配膳作業に携わっている間、それを待つ児童は訪問したメンバーやスタッフと、片言の英語やできるだけ分かりやすい日本語を選んで、交流を図っていました。会話している内容は、アニメやスポーツ関係の話題が多かったようです。喫食が始まっても、その雰囲気は引き続き保たれていました。領事館関係の皆さんは各グループに分かれていましたが、日本語を話せるスタッフがグループ毎にきちんと配置されていたのが、大きな要因だったようです。 準備や食事の間に、片言の英語や分かりやすい日本語を使ってコミュニケーションを図ろうとしている姿が見られました 給食時間が終わると、休み時間や清掃活動があります。少々寒くても運動場で元気に遊ぶ6年生の姿や、決められた場所の掃除をしっかり行っている様子に、日本の小学校の特徴が表れていたようです。 昼休みに運動場で遊んでいる様子や、清掃時間が始まると熱心に作業している姿を普段のまま見て貰っていました 5時間目の授業が始まりました。はじめに領事館の方から、アメリカという国の概要説明がありました。国土の面積が世界で3番目に広く、日本の約25倍もあること、人口も3億人を超えて日本よりもはるかに多いことなどが紹介されます。そして子供たちがイメージしているよりも、実は「農業大国」であることが、写真やデータから分かりやすく説明されていきました。 5時間目になると今日の授業の概要が説明され、さっそくアメリカ領事館スタッフの話が始まります アメリカ合衆国の国土や人口に続いて、世界でも有数の農業大国であることなどが説明されていきました 特にその農地面積は広大で、農家一戸当たりの平均農場面積が甲子園球場65個分もあることは児童にとって驚きだったようです(因みに日本の同面積は甲子園球場0.6個分だそうです)。その結果、アメリカの食糧自給率は130%を超え、農産物の多くを外国に輸出していることが解説されていました。 食糧自給率が100%を切る日本は輸入に頼る部分が多くなり、逆にアメリカは輸出できる量の多いことが分かります 続いて食材納入事業者のニガキ株式会社さんが、給食の献立を基に「輸入品」がなければ、食材確保の難しい現状を説明されました。一例をあげると、タッカンジョンやトックの味付けにも使用された「しょうゆ」は、大豆からつくられる日本の代表的な調味料ですが、その原料となる大豆自体の多くが、外国からの輸入品に頼らざるを得ない現状だそうです。国産で賄える割合(カロリーベースによる大豆自給率)は6%程度で、豆腐や味噌といった日本食を代表するような食品も、同様の傾向にあるとのことでした。 日本もアメリカから農産物を輸入することで給食が成り立っていることを納入業者さんが説明します 先ほど一緒に食べた献立に使われていた「しょうゆ」も、アメリカ産の大豆が多く使われているそうです 話は変わって、アメリカの小学校の給食についても言及されました。アメリカではスクールカフェテリア形式での提供が多く、小学生といえども自分で何を食べるか決めるのが一般的だそうです。バイキング形式で用意されているメニューの中から、好きなものを選んでトレーに載せるのですが、ピザやハンバーガー、ホットドッグなどの外に、スパゲッティやシリアルなどが人気だとか‥。日本の給食に比べて、野菜の種類や調理(味付け)の選択肢が少ないかも‥とのお話でした。 アメリカの給食でよくみられるカフェテリア形式の様子や、複数メニューから好きなものを選ぶ方式が写真で紹介されました 次にお話をして下さったのは、神戸市の姉妹都市、シアトル市があるワシントン州農務部の方でした。アメリカの首都はワシントンD.Cですが、日本人にはワシントンという名前のせいか、首都のある場所と間違えられることが多いとおっしゃっていました。「みんなはAmazonやコストコって聞いたことある?」と質問すると、多くの児童が「聞いたことある!」。それらの会社はもちろん、他にもマイクロソフトやスターバックスコーヒーといった有名な企業の本社も「シアトルにあるんだよ」と聞いて、参観していたスタッフもビックリ。先般、MLBのシアトルマリナーズで活躍したイチロー選手が野球殿堂入りを果たしたとの報道がありましたが、その話題を紹介した際の児童の反応が今一つだったのは、時の過ぎる速さを実感させられる場面でした。 神戸と姉妹都市のシアトルがあるワシントン州農務部日本事務所の方が、ワシントン「州」についてのお話をして下さっています シアトルは有名企業の本社がいくつもあるような大都市ですが、州全体ではとても農業が盛んだそうです 最後に登場したのが、領事館のオフィスマネージャー兼英語教育コーディネーターの方でした。基本的に英語のみの説明で、児童にアクティビティーやクイズを提供します。6年生も、コーディネーターが話される英語を理解しようと努め、友だちと情報交換しながら、なんとかついていこうとしていました。 在大阪・神戸米国総領事館のスタッフから、英語のみで指示されるアクティビティーやクイズに挑戦しています コーディネーターの熱心な説明や優しい雰囲気が児童の心に響いたのか、質疑応答のコーナーでは、次のような質問が出ていました。 Q:コーディネーターさんはどこで生まれましたか? A:カリフォルニア州のサンフランシスコです。MLBのジャイアンツやクラブ(カニ)、ゴールデンゲートブリッジなどが有名だよ。 Q:アメリカと日本で何が一番違っていますか? A:最も違うのは、アメリカは個人を優先することが多いのに対して、日本ではグループや団体での行動を大事にするところかな。アメリカというのはいろんな国から来た人たちの住んでいる国なので、価値観や考え方がいろいろと違っているからかもしれないね。 Q:アメリカの給食って、どんな食べ物が多いのですか? A:あなたはどう思う? Q:ポテトとかお肉かな? A:お見事、正解! 印象に残ったのは、追加の説明の中で「日本の給食は、アメリカの給食に比べてずっと健康的。」「関係する大人がいろいろと考えて提供されており、世界で最も健康に配慮したシステムだと思う」といった意見が、英語でスピーチされたことです。児童も、自分たちが普段なにげなく食べている給食のことを、アメリカ人がこのように感じていることが意外だったのか、とても真剣に話を聞いていました。給食に携わる立場の者として、ありがたい意見を聞けたな‥と感じました。 質問コーナーでは積極的に挙手して尋ねる姿が見られ、スタッフも熱心に答え通訳していました 記念にワシントン州のクリアファイルを頂きました、お別れの挨拶の時間となったので「今日はいろいろとありがとうございました」 今回は、給食や食育といった観点から、どのような国際理解教育が可能かを考える、試行的な取組でした。随分と意義のある内容だったと思われますが、今後も継続して実施していけるかどうかは、ご協力いただいた方々と検討していく必要がありそうです。昨今の国際社会に対応していけるよう、児童にとって少しでも意義ある国際交流の場になれば‥と考えています。 Tweet Share